命の終わり方

いつか必ず訪れる永別は突然来るものだよ

救急搬送

意向確認

嫁の兄が病院に到着した。おばあちゃんは彼と嫁の実母。普段は他県に長期出張中の義兄がこの日はたまたま帰京していた。嫁からの連絡を受けて、日曜日の早朝に病院に駆け付けたのだ。 嫁が義兄に対して一通りの説明をする。久しぶりに再会する兄妹が互いの実…

意思表示

幅の広い廊下だった。築年数は浅いはずのその病院だが、壁の傷や黒ずんだシミ、欠けてしまった手すりなど傷んだ部分ばかりが目に入った。 必要最小限の物質だけで構成されたその場所にはポスターや張り紙すらも無く、人がいる痕跡を感じられない空間だった。…

ICU 集中治療室

病院に向かう救急車を自宅の玄関前で見送る。暫くすると、救急車に同乗している嫁からスマホにメッセージが届いた。そこには搬送中のおばあちゃんの様子が報告されている。それから家の戸締り、洗濯物のこと、作りかけの朝食のことなども細かく指示されてい…

搬送

意識が混濁しているおばあちゃんを2階の寝室から救急車まで運び出すことになる。階段で降りるしかないが、ストレッチャーなどを運び込めるような幅もなくどうやって救急車まで運び出すのか不安だった。 そんな時に救急隊員がおばあちゃんの使っていたタオル…

積極的な治療

救急隊員がおばあちゃんの状況を確認する。気付いたときの状況や昨晩の様子、食事や水分摂取のことを次々と早口に質問された。前日にはいつものようにお出かけしていたこと。帰宅後にすぐ昼寝を始めたこと。夕方になってから発熱していたこと。食欲が少なか…

救急隊

到着した救急隊を見て大きな安堵感に包まれた。大きな体つきの頼もしい男たちの動きは迅速だった。

119番

おばあちゃんの様子を見て救急車を要請したが、自宅の住所が思い出せない。イザとなると人はこんなにも狼狽するのだ。

昏睡

朝になっても起きてこないおばあちゃん。様子を見に行くと呼吸の音がおかしい。